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理不尽図鑑 3:「石の上にも三年」神話の崩壊?目標未達成は人間失格?

目標未達成は人間失格?理不尽な上司の叱責は何故起こる?

目標未達で上司に怒られその理不尽さに別の道を目指す4コマ漫画

なぜ目標が達成できないとこのような理不尽な現状が起きるのか?

せっかく頑張った分だけ報われるインセンティブに期待して入社したのに、待っていたのは「1日数百件のテレアポ」と「根性論の儀式」……。

かつての私と同じように、今まさに朝礼で声を張り上げているあなたへ。 キャリアアドバイザーの視点から、この「異常な現場」の裏側を解き明かします。

甘い言葉に誘われた「歩合制」の罠

ちょうど大手総合商社の子会社を退職して、暫く悶々としていた頃、ちょうど大学時代の仲間と久しぶりに飲みに行くことになった。久しぶりに会った以前の友人は、まるで別人かのような風格を漂わせていた。聞くと
「俺今の月給100万だぜ、、凄いだろ!」
「えっ何ソレ?・・何か悪いことでもしただろ? 強盗か?それとも詐欺で稼いだか?」
「は?違うわ~俺今営業でトップセールスでさ!歩合制の会社で稼げば月100万は余裕だし!」
「100万かよ!!いいよな~ 羨ましいわ!」

それを聞いた翌日・・自分は転職サイトで片っ端から歩合制の仕事を調べまくっていた。
調べていく中でネット系のITベンチャー企業が熱いことが判明した。
『ネット系ITベンチャー』・・・
その響きに、2社目の古臭い組織から脱出できる希望を感じていました。
勤務先や条件、未経験可など調べていく中で、一ついい会社を見つけ、その求人内容の中には
「入社3か月で月収50万!?」「入社3か月で管理職への道も!」
と目を疑うような内容の記載があり、50万という数字に目が眩み、社風や仕事内容等一切見なかった自分がいました。
それで早速応募することに・・
書類選考も通り、いざ面接に行き、いきなり面接で聞かれた事は・・・

「稼ぎたい?」
「出来れば稼ぎたいです。」
「何で?」
「稼いで結婚して家を持ちたいです。」
「分かった、じゃ内定ね! 来週から来て」

面接官は私のスキルや経歴など一切見ていませんでした。ただ、『こいつは金という餌でどこまで走るか』を値踏みするような鋭い目で、ニヤリと笑ったのです。

ちょうど前の会社辞めてから3か月が経とうとしていたこともあり、そろそろ決めないとなと思っていた矢先でした。
今思えば無職期間が長くなる恐怖と、キラキラした友人への劣等感・・
その焦りが、私の正常な判断力を奪っていたのかもしれません。
それで入社当日、早速目にしたのは・・・・

地獄の日常:数字に追われ、人格を削られる日々

静かなオフィスを想像していた私を待っていたのは、怒号と、鼓膜を突き破らんばかりの電話での話し声、そして怖いぐらいの異常な熱気でした。
ホワイトボードに殴り書きされた何かの数値を前に、まるでマシーンのようにただひたすら電話越しの相手に話すというよりもはや叫び続けているかの若者たちの姿でした。

入社手続きなどはあっけなく、早速営業部のお偉いさん(と言っても見た目は20代後半)の統括部長の方の挨拶があり、また面接で聞かれた時と全く同じことを聞かれ、
「稼ぎたい?」
「はい、結婚して家を持ちたいです。」
と同じことを回答し、
「じゃ、頑張れ」
と一言で終わり、次は早速直属の上司の方との挨拶で
「今日から早速仕事をしてもらうから」と言われ
心の中で「え~」と思いましたが、
午前中多少商材に関するレクチャーを受け午後から早速架電することに・・

実際架電するも
「オーナは外出中です」
「忙しいから、うちは間に合っているからいいよ」
「営業?それうちやってるから要らないよ」
「忙しいから切りま~す」「ガチャッ」
「前も電話あったよ、2度と電話してくるな」

と全く相手にされませんでした。
午後から何件架けたのか・・おそらく100件は架けていたかもしれませんが、
誰もまともに相手にしてくれませんでした。

そんなこんなで怒涛の初日が終わったかと思いきや、何やら物々しい雰囲気に包まれ・・・
全員が席を立ち、一人ひとり前に立ち、いきなりの一言・・・
「お疲れ~す、今日はアポ1件しか取れませんでした・・明日は必ず4件取ります。」
「お疲れ~す、今日はすいませんアポ1件も取れませんでした、明日は頑張ります」
一人ひとり大きな声で叫んでいる人や、声がかすれている人など様々・・
確か小学生の頃、悪いことをした時に皆の前で謝っていた時のような感覚を覚えました。

最後に先ほど入社時挨拶を交わした例の若い統括部長の方が前に立ち、一言・・
「お疲れす、今日の数字何これ?やる気あんの?」
皆黙って体を硬直して耐えているような感じで統括部長を見つめていました。
「ちょっと皆気合が足りねんだよ」

と怒涛の重圧に、思わず心臓をえぐり取られるかのような気持ちに・・・
まるで戦場のような今までに経験したことがない異様な空間に圧倒され、声が出ませんでした。
会社を出た後、思ったのは・・・
「なんかとんでもないところに来てしまった・・・」

それから毎日「稼げる」というエサに釣られ、私は受話器を握りしめた。
毎日ひたすら電話をかけ続け、一日300件から多い時には400件架電することも・・
いつしか1日の「ガチャ切り」と「罵声」が、私の耳に鳴り響きBGMになっていった。

更には追い打ちをかけるように目標未達の場合の上司からの叱責・・
これは前職での残業100時間とはまた違う「お客からは拒否され」「達成できない焦り」「未達の場合の上司からの叱責」という3重の重りを足にひきづって歩かされている・・
まさに拷問でしかない感覚。。

限界の瞬間:鏡に映った「死んだ魚のような目」

この異様な光景の職場に、やはり脱落者が続出しており、今回5名で同期入社したなかで3名はたったの3日で脱落してしまい、残るは自分ともう一人の2名だけとなってしまいました。

もう一人の同期は、いかにも口がうまそうな感じで、いい感じでお客様と話しているのを横目に
自分はただひたすら勢いというか、何の根拠もない熱意で相手を押しながら、かろうじて目標を達成していました。
ただダメな時は全くダメで坊主になることも多々あり、その際は上からの容赦ない叱責をくらうことに・・
実際架電していく中で、100件に1、2件はアポが取れるようになっていき、自分の中では、これはイケる、イケないの感覚はつかめてきた感じもありました。
ダメならさっさと諦め、次々へ架電。

しかし心の中では、仕事に対する充実感は全くなく、あるのは成果が出なかった時の焦りと、未達成の時の上司からの叱責、たとえアポが取れても誰かに迷惑をかけているのではないかという罪悪感、更には同期への嫉妬や劣等感など複雑に絡み合うような状況がしばらく続きました。

実際アポが取れても実績(受注)にならないと成果にはならず・・暫くやっていく中で
心に芽生えた感情・・それは・・・
「何のために仕事をしているのか?」
自分の顔を見ると、「まるで死んだ魚のような目」で、
当初目的であった「稼ぎたい」という気持ちは、いつしか微塵もなくなり、そのうち・・・

【考察①】「成功の青写真」が招く、自縄自縛の苦しみ

会社が提示する「月収100万」「役職者」というビジョンは、一見希望に見えますが、実は「このレールで走れないお前は脱落者だ」という無言のプレッシャーです。
「他人の作った成功の定義」に自分を無理やり当てはめようとして、心が拒絶反応を起こします。リタイアの正体は「根性なし」ではなく、「魂がその成功を自分のものだと認めていなかった」という健全な生存本能なのです。

【考察②】運による要素が大きい「歩合制」の罠

テレアポの成功は、正直に言って「運」の要素が大きいです。 たまたま社長が電話に出るか、たまたま他社に不満を持っているか。100件かけて1件あるかないかの確率論の世界です。

しかし、数字に追われる企業では、その「運の悪さ」を許容する余裕がありません。「数字が出ない=努力が足りない」 そう決めつけることでしか、組織を管理できない上司の「スキルのなさ」が、あの怒号や宣言の正体なのです。

【考察③】「確率論」を「人間性」にすり替える集団催眠

テレアポの本質は「確率論」です。しかし、この組織では「数字=その人の人間的価値」という評価基準が支配しています。
たまたま運良く当たった同期を「実力」と崇め、運が悪かった自分を「努力不足」と蔑む。この「偶然を必然と思い込ませる集団催眠」が、同期への嫉妬や自己嫌悪を増幅させ、正常な判断力を奪うのです。

【考察④】負の連鎖:自分がされた苦労を部下にも味合わせる「教育の呪い」

今の直属の上司も、かつてはその上の部長から同じように詰められ、辛い思いをしてきたはずです。
「自分も耐えたんだから、お前も耐えろ」
この歪んだ連鎖が、教育ノウハウのない組織では唯一の指導法になってしまっています。

【考察⑤】「仕事してる感」を出すためのパフォーマンス

係長は課長に、課長は部長に「自分はちゃんと部下を厳しく指導しています!」という姿勢を見せなければなりません。
そのための「示し」として、部下を大声で詰めたり、目標を叫ばせたりするパフォーマンスが行われているのです。そこに部下の成長や売上アップという本来の目的は、もはや存在しません。

【考察⑥】「サンクコスト(執着)」と「アイデンティティ」の崩壊

「ここで辞めたら、また無職に戻る」「友人に合わせる顔がない」という外圧による継続は、最もエネルギーを消耗します。
リタイアという結末は、「偽りの自分」を維持するためのエネルギーが底をついた瞬間です。それは失敗ではなく、むしろ「自分自身の本当の軸」を取り戻すための、痛みを伴う強制終了だったのです。

私からのメッセージ:その「根性」は、もっと別の場所で活かせる

当時の私は、上司の怒号(教育の呪い)だけでなく、『他人が提示した成功』に自分をアジャストできない自分に一番絶望していました。

稼げば勝ち、数字が人格。そんな狭い価値観の戦場で、同期と比較され、顧客に拒絶され続ける日々。 私がリタイアしたのは、根性がなかったからではありません。 『誰かの作った船に乗って、誰かの決めたゴールへ向かう』ことに、心が限界を迎えたからです。

この3社目での挫折こそが、私にとって最も苦しく、最も重要な『麻疹(はしか)』でした。

今だから言えます・・この時、リタイアした自分を責め続けていた私に教えてあげたい。
それは『逃げ』ではなく、自分ではない誰かの船から飛び降りるための『決断』だったのだと・・・

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